砥石の種類Type of Whetstone
砥石は大きく分けると、およそ次の3種類に分類することができます。
削る砥石
円盤状やリング状のもの、または角型のものなど
磨く砥石
円盤状やリング状のもの、または角型のものなど(削る砥石と殆ど同じ)
切る砥石
薄い円盤状のもの
私どもでは削る砥石、磨く砥石のどちらも扱っておりますが、特に磨く砥石が中心となります。
この磨く砥石と一口に言いましても実際には、磨く対象や磨く方法によって様々な種類の砥石が出来ることになります。
つまり、お客様の使用目的によって砥石は、造る方法(製法)、砥粒の種類、砥石の形状、砥石の硬さ(結合度)などがいろいろと異なってまいります。
ここでは、造る方法による分類や特徴ならびに用途別について紹介し、砥石を選択する場合の参考に役立てて頂きたいとおもいます。
PVA製法
特徴
PVA製法とは、結合材にポリビニルアルコール(PVA)という軟質樹脂を使用し、150℃~300℃位で焼成して砥石を作る方法であり、一般的には弾性砥石と呼ばれており、優れた弾性を持たせることができる。
PVA製法の砥石は、弾性に富んだ多孔質の砥石に成形されており、砥石自体の目詰まりや目つぶれ、被加工物のスクラッチやチッピングなどの発生を抑え、高番手の砥粒を採用することにより、仕上り面粗度を向上させ、レベルの高い光沢を実現することができる。粒度は#10,000程度まで、製作が可能であり、光沢とラッピングに優れたNKS砥石と、平坦度と研削性に優れたNKB砥石の2種類のPVA砥石を取り揃えている。
用途
- グラビアロール(グラビア印刷用銅シリンダー)
- 各種磁気ヘッドの研磨
- 時計バンド・時計ケース・メガネフレーム
- 貴金属・装飾品
- コンピューター用磁気ディスク・コピーロール
- 建材・石材・装飾プレート
- その他、ステンレス・アルミ・銅・チタン・ガラス・石材・ゴム・樹脂・その他の目詰りを生じ易い軟質難削材など
NKS砥石
特徴
NKS砥石は、弾性砥石の持つしなやかな生地がワークをやさしくとらえ、多孔性砥石の特徴の一つである、優れた切りカスの排除能力により、チッピングを起こさず研磨できます。
砥石の組織内に連続気孔を有しているため、砥石自体に柔軟性があります。また、研磨作業の際の発熱が少なく、自生作用があるため目詰まりの発生を抑えることができ、結合度をコントロールすることにより精度の高い寸法精度を実現しながら、豊かな光沢の綺麗な仕上げ面に導くことが出来ます。
NKS砥石が最も多く使用される目的の一つに、グラビアロール研磨があります。
ビニールの包装紙やレトルト袋、アイスクリームの蓋やシャンプーのボトルなどには、グラビアロールによるグラビア印刷がされています。グラビアロールは専用のバーチカル研磨機を使用して研磨され、使用される砥石には高度な切れ味と、レベルの高い面粗度が要求される。NKS砥石はこれらの精密かつ困難な研磨作業に最適であり、幅広い分野で使用されている。
用途
- グラビアロールの研磨。
- シリンダー・圧延ロールの仕上げ研磨。
- ベアリング、シム、ワッシャー、ノズル、ピストンピンなど。
- その他、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、クロムメッキ、ゴム、プラスチック樹脂など
NKB砥石
特徴
NKB砥石は、当社の長年にわたるレジノイド系細粒砥石の製造技術に新規ノウハウを加味して開発された製法の砥石です。均質な弾性組織を持ち生地に腰があるため、加工精度が高く仕上り面粗度が高いのが特徴です。
砥石の材料となる砥材に高番手の微細砥粒を採用して製造することにより、加工物表面の歪み、うねり、加工変質層に対して研磨加工を施すことが可能で、面粗さを向上させ、真円度を改善します。
NKB砥石は、磁気ヘッド研磨の砥石としても最適です。磁気ヘッドには、最終製造工程において磁気ヘッドシールドケースのR面形状成形加工研磨をほどこすことが必要です。R面研磨には、通常、磁気ヘッド研磨用円筒研磨機を使用するのが一般的です。磁気ヘッド研磨用円筒研磨機とは、治具に磁気ヘッドを多くの場合複数個装着し、スピンドルにセットして上下の揺動運動をさせながら左右にトラバース運動をさせて円筒研磨を行い、R面を鏡面研磨するものです。
用途
- オーディオ用テープレコーダー用ヘッド、ビデオテープレコーダー用ヘッド、磁気カード読み取り用ヘッド。
- 注射針、各種刃物類、各種のコネクターの端面研磨など。
- アルミニウム、ステンレスなどの非鉄金属向け精密仕上げ。
- タービンブレード、各種シリンダーのホーニング加工など
レジノイド製法
特徴
- 結合剤としてフェノール樹脂などの合成樹脂を使用して、低温(およそ200℃)で焼成していることが大きな特徴といえます。 したがって、ビトリファイド製法では使用困難な超微粉あるいは組合せが難しい混合砥粒を使用した砥石を変形なく製造することが出来、これによって研削性(キレがよく、仕上りもよい)の良い砥石の製造ができます。
- この砥石は衝撃性に強く、引張り、曲げ、圧縮強度など機械的強度が大きく、精密仕上加工から粗研削まで幅広く利用されております。
用途
- この製法による砥石は、研削性がよいため、オーディオ、ビデオ、カードリーダーの磁気ヘッドあるいはフェライトコアなどの鏡面仕上用研磨砥石、光ファイバーのコネクター部の端面研磨など、超精密仕上加工用として使用されています。
- また、砥粒の保持力が極めて大きいため、高能率の研削や加重の高い研削あるいは高周速の研削にも利用されており、粗研削分野の大半はこの製法による砥石に依存しております。
ビトリファイド製法
特徴
- 結合剤として長石や粘土などを使用し、適量の補助剤を加えて炭化珪素砥粒や溶融アルミナ砥粒などと混練成型、1,300℃近辺の高温で焼成し高い保持力を形成している点が、最大の特徴です。 したがって、常温では変性することもなく、研削力および対薬品性にも優れ、長期間の保存も可能です。 また、結合度(砥粒の保持力)の調整が容易に出来、その調整範囲も広い。
- 粒度においても粗粒(#20番程度)から超微粉(#4000番程度)まで利用粒度の幅も大きく、一般研削から精密研削まで研削範囲の広いのも一つの特徴です。
- 最近では、気孔を大きくとった砥石なども開発され、研削中の目詰まりを解消する砥石としてその応用範囲が広がっております。
用途
- この砥石の特徴からその用途は限りなく広く、一般鉄鋼材はもちろん焼入鋼材、超合金、鋳鉄、非鉄金属、非金属などの研削研磨ならびにダイヤモンドエ具のツルーイングやドレッサーとしても使用されたり、砥石の気孔を利用したフィルターなど、その用途はますます広がりつつあります。
高番手ビトリファイド砥石
特徴
ビトリファイド砥石とは、粘土質結合剤を使用し1300℃の高温で焼成し磁器質化して砥粒を結合してできる砥石のことである。
ビトリファイド砥石は砥粒の保持力が強いうえ、切りくず排除の気孔の割合をコントロールしやすく、剛性も高いので寸法精度を出しやすいため、様々な研削作業に適合している。自動車業界、鉄鋼業界、造船業界などの分野の金属加工を中心とした部品の研削加工に対応できるため、研削砥石の大半はビトリファイド砥石であるが、ある程度の研削力を求められることもあり、以前は比較的粗目の砥粒の砥石が多かった。しかし、近年は要求される加工精度の向上により中目や細目の砥粒を使用したビトリファイド砥石も増えてきている。
高番手ビトリファイド砥石とは、細目のビトリファイド法の一般砥粒砥石のことである。IT技術の急激な進歩により、半導体用のシリコンウェハーの薄膜化要求と共に半導体の高性能化、小型軽量化が要望されている。この結果、ダイヤ、CBNの砥石に使用される砥粒の細目化が進んでいるが、これらの砥石の長寿命化、研磨効率を向上させるために適切なドレッシング、ツルーイングを行う必要があり、このための砥石として、剛性の高い(寸法精度が出易い)かつ、細目のビトリファイド法の一般砥粒砥石が求められるようになってきている。
用途
- 各種ダイヤモンド工具、CBN工具用ツルーイングドレッサー。
- ミストストーン、CO2ストーンなどのエアストーン。
- ガス分析用フィルター。
- 各種ベアリング、軸受、シリンダー、カムシャフト、ノズルなどの仕上げ研磨。